個人債務者再生手続きは、2001年4月1日にスタートした比較的新しい制度で、そのためか、まだまだ一般の方にはあまり馴染みがないのが現状です。しかし、最近になってようやく認知されてきました。この手続きは例えば、500万円の借金のある個人が、収入に応じて支払える額を返済するという計画を立て、この再生計画を裁判所が認め、実際に3年の間に再生計画どおりに返済できたら例えば返済額が200万円だった場合、残りの300万円の借金が免除されるという手続きです。つまり、3年間きちんと返済できれば残りの借金がなくなるというわけです。なお、個人民事再生手続きは、住宅ローンなどを除く債務総額が5000万円以下の個人債務者で、将来において一定の収入を得ることが見込まれるときに利用できます。この個人民事再生には住宅ローン特別条項を活用することによってマイホームを維持しながら債務整理ができるという利点があります。これは住宅ローンが終わっていない状態で、その支払いが困難となったときに利用できるもので、住宅ローンの支払額をカットするのでなく、支払いを繰延べします。ここで注意が必要なのは、住宅ローンについては債権のカットはなく、利息の免除もないというところです。これにより、住宅ローンの残額が多い場合にはなかなか再生計画案が立てにくくなります。もしあなたが将来、会社設立を行うのであればこの辺りは押さえておきましょう。
自己破産をすると借金は全てチャラになります。個人民事再生が自己破産と違うのは借金を大幅に減額しますが、原則として減額された借金を3年かけて返済していく必要があるというところです。しかし、自己破産の場合、債務者が住宅を所有していたとすると、強制的に換価処分され債権者に配当されますが、個人民事再生では住宅ローン特則を利用すれば、債務者は住宅を維持しながら借金の整理ができます。自己破産をすると破産手続開始決定後の収入・財産は原則としてすべて破産者のものとなり自由に使用・処分しても構わないとされますが、個人民事再生では原則3年間は債務者の収入から借金を債権者に返済しなければならず、その返済額も自己破産で債権者に配当される配当額を上回る必要があるのです。また、個人民事再生では、自己破産のような免責不許可事由はないので浪費・ギャンブルなどで多額の借金をしてしまった人であっても、要件に合致さえすれば利用可能であり、自己破産のような資格制限もないので、例えば司法書士・弁護士・税理士・会社の役員などの職に就いたまま利用できます。
債権者の同意が必要な小規模個人再生では、典型的には自営業者、歩合制の労働者を想定した制度となるので、通常の民事再生手続は、主に法人を念頭に置いているので手続が大変です。そこで、再生手続を簡素化・合理化した小規模個人再生手続がもうけられています。利用するには、将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあり、かつ住宅ローンを除く借金が5000万円を超えないことが条件です。このとき、住宅ローンを除くのは、多額な住宅ローンを抱える債務者にも、この手続が利用を可能にするためです。再生計画の返済方法は、原則3年間(最長5年となっていますが、特別な事情がないかぎり認められることは困難です)、3ヶ月に1回以上の割合で分割返済することとされています。もちろん債権者に平等な返済方法で返済することが求められます。このとき、原則として3年間で最低弁済額か、自己破産した場合に債権者に配当されるであろう金額(清算価値)のどちらか多い金額を最低限支払う必要があります。清算価値が弁済額の基準となっているのは、債権者にとって、破産した場合より弁済額が下回るのでは民事再生手続に協力する理由はないのです。再生計画案は、債権者数の半数以上の同意、かつ、債権総額の1/2を超える同意が必要になります。これは、正確にいうと、再生計画案は、同意しない旨を書面で回答した債権者が半数に満たず、なおかつ、反対の意思を表明した債権者の債権額の1/2を超えないときは、再生計画案は可決されたものとみなされます。積極的に賛成がなくても、積極的に不同意の回答をしない限り賛成した者と扱うこととされ、生計画案が可決しやすいようになっています。
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Last update:2023/9/25